はじめに
10月31日に天皇賞・秋が行われますが、初めての古馬混合戦におけるエフフォーリアと古馬混合戦になってから勝てていないコントレイルが通用するのかということが気になったため、「古馬混合戦における馬齢の影響」を中央競馬の2010年1月1日以降、過去11年間のデータから分析してみました。
2021年10月31日に行われた天皇賞・秋では、古馬混合戦初挑戦となるエフフォーリア(横山武史騎手)が終始安定した走りを見せて勝利し、古馬の壁などないことを実証してくれました。
この天皇賞・秋は上述の通りエフフォーリアとコントレイル、グランアレグリアという3世代最強馬の3強対決でしたが、やはり3強の能力は抜けており、3強並び立つ形で掲示板を埋めたとても見応えたえのあるレースでした。歴史に残るレースだったのではないでしょうか。
とりあえず、エフフォーリアと横山武史騎手おめでとうございます。
この記事は天皇賞・秋に触発されて分析・執筆いたしましたが、その他のレースにも提供できる分析内容となっておりますので、是非ご一読いただけますと幸いです。
古馬混合戦に初挑戦する3歳馬が4歳以上の古馬に敗北することを「古馬の壁」と言ったりします。たとえば、2019年の天皇賞・秋では、あのアーモンドアイに続いて2番人気であったサートゥルナーリアが6着敗退した際に「古馬の壁」が敗因としてあげられています。
一方で、2021年の札幌記念(G2)では、ソダシが古馬の壁に挑戦しましたが、鮮やかな勝利を飾り、1着を勝ち取りました(そもそも、ソダシレベルの競走馬がG2で勝つことは当たり前かも知れませんが)。
このように本当に存在するのかよくわからない「古馬の壁」について分析してみました。
結論としては、特定の条件を除いて、基本的に「古馬の壁」はほとんど存在しなかったです。具体的には、
- 古馬混合戦において、基本的には馬齢は若い方が勝率・回収率が高い傾向がある。
- 古馬混合戦における7歳以上馬は勝率・回収率ともにガクッと悪くなる。
- ダートには古馬の壁がある。
- セン馬・牝馬には若干の古馬の壁がある。
- G2・G3で古馬混合戦に初挑戦となる3歳馬は成績が良い。
- ただし、2戦目以降の古馬混合戦となる3歳馬には注意が必要。
という結果になりました。詳しいデータ分析は下記となります。
分析
まずは、全体の傾向を平均値で見てみましょう。
全体の傾向
表1 「3歳以上」戦における馬齢別成績
表2 「4歳以上」戦における馬齢別成績
「3歳以上戦」と「4歳以上戦」のいづれも年齢が若い方が成績が良い傾向が見られます。また、「3歳以上戦」における3歳馬、「4歳以上戦」における4歳馬の勝率はほとんどの面で最も高く、「古馬の壁」は存在しないと行っても良さそうです。
気を付けるべきは、3歳馬(4歳馬)は回収率で4・5(5・6)歳馬にやや劣る傾向がある点です。
おそらく、3歳馬(4歳馬)でこれらのレースに出走する競走馬はイケイケの有力馬が多く、斤量有利も手伝って勝率が高いのだと思います。しかしながら、イケイケであるがゆえに、過剰人気となり回収率がやや落ちているのではないでしょうか。
このデータを見る限りでは、3歳以上戦の場合は4歳馬、4歳以上戦の場合は5歳馬に妙味があります。ただし、3(4)歳馬の回収率も悪いわけではありません。
また、7歳以降の馬の勝率や回収率はガクッと落ちており、馬券購入時には気を付けなければなりません。
初めて古馬と対決する3歳馬「古馬の壁」
続いて、初めての古馬混合戦における3歳馬に絞って成績を見てましょう。
表3 「3歳以上」戦の3歳馬が初挑戦かそれ以降別の成績
3歳馬で「3歳以上」戦が初挑戦の場合、それ以降に比べてやや成績が落ちるようです。これは、単勝回収率を除いて僅かながらも統計的に有意な値(確率的な誤差ではない可能性が高いという意味)となっています。
それでも、表1も考慮すると他の馬齢に比べて勝率・回収率ともに高い水準ではありますが、初挑戦時にはそこを少し割り引いて考える必要があるかも知れません。
面白いのが下記の芝・ダート別成績になります。
表3 「3歳以上」戦初挑戦時3歳馬の芝・ダート別成績
ダートの方が明らかに成績が落ちています。ダートには古馬の壁があるといえるかも知れません。これは出走馬の違いによるものである可能性があります。芝の方が圧倒的な能力を持つ有力馬が多く、そうした馬が芝の古馬混合戦時に古馬をなぎ倒しており、ダートではそうではいかないという可能性があります。
表4 「3歳以上」戦初挑戦時3歳馬の性別別成績
また、性別別にみると、牡馬には古馬の壁はありませんが、セン馬と牝馬(特に去勢されたセン馬)には古馬の壁があるようです。牝馬は誤差の範囲かなという感じですが、セン馬には壁があります。おそらく、有力馬以外がセン馬になる可能性が高いためであると考えられます。
重賞およびG1における「古馬の壁」
最後に、注目度の高い重賞およびG1における「古馬の壁」を見てましょう。まずは重賞全体です。
表5 重賞の古馬混合戦初挑戦の3歳馬の成績
重賞において古馬混合戦初挑戦となる馬の成績はかなり高くなっております。やはり、能力の高い馬がトントン拍子にクラスを上げてきて、古馬を圧倒しているのでしょうか。
表6 G1の古馬混合戦初挑戦の3歳馬の成績
G1を初挑戦とする場合は勝率はほぼ同じですが、回収率が少し落ち着きつきます。これは、G1が古馬混合戦初挑戦になる馬は注目度が高く、戦える能力はあるものの、過剰人気になっているのでしょう。
気になるのは、初挑戦後の3歳馬の成績がかなり悪いことです。理由はパッとは思いつきませんが、何か仮説があればコメント頂けますと幸いです。
まとめ
まとめますと、基本的に芝においては「古馬の壁」はほとんど存在しないが、ダートにおいては存在するという結論です。繰り返しになりますが、
- 古馬混合戦において、基本的には馬齢は若い方が勝率・回収率が高い傾向がある。
- 古馬混合戦における7歳以上馬は勝率・回収率ともにガクッと悪くなる。
- ダートには古馬の壁がある。
- セン馬・牝馬には若干の古馬の壁がある。
- G2・G3で古馬混合戦に初挑戦となる3歳馬は成績が良い。
- ただし、2戦目以降の古馬混合戦となる3歳馬には注意が必要。
という結果になりました。基本的には、芝のG2、G3であれば積極的に初挑戦3歳馬を買うべきと言えるかも知れません。G1においても問題はないでしょう。
以上の結果を踏まえると、10月31日における天皇賞・秋では、エフフォーリアとコントレイルともに問題無く、両馬ともに最も脂がのっている状態と言えるでしょう。杞憂でした。
また、5歳馬の成績も良く、3歳馬エフフォーリア、4歳馬コントレイル、5歳馬グランアレグリアという各世代の最強馬がそれぞれ良いコンディションで雌雄を決する最後の機会という言えますね。楽しみです。
競馬の世代については、こちらの記事でも分析していますので、是非合わせてお読みください。
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