2021年11月26日のジャパンカップにて無敗の三冠馬であるコントレイルがラストランを迎えます。三冠馬としては史上8頭目、父のディープインパクトに続き無敗での三冠達成であり、父子無敗での三冠は史上初の快挙、間違いのなく名馬中の名馬といえます。
しかしながら、この無敗の三冠馬であるコントレイルは、3歳になり古馬混合戦では1着がとれなくなり、2017年生まれのコントレイル世代は全体的に弱かったため無敗の三冠を達成できたのではないかとささやかれ始めました。
そこで、このコラムでは、2010年からの中央競馬のレースデータを使い、世代毎の強さの比較をすることにより、「コントレイル世代は本当に弱いのか?」という問いを検証することとします。
分析の結果の結論としては、コントレイル世代は全体としてはやや弱いものの、トップ層は他の世代と比べても強いということがわかりました。また、やはりエフフォーリア世代は他の世代と比べても全体的に強い世代ということもわかりました。
古馬混合戦の競馬予想において、とくに3・4歳馬の馬券の検討では、この世代間の強さを比較することは非常に有効だと思います。是非最後までお読み頂けると幸いです。
- 無敗の三冠馬コントレイルやその世代の強さに疑問を持っている人
- 古馬混合戦に挑む3歳馬の強さを知りたい人
- どの世代の馬が強いのかを知りたい人
なお,2022年の三歳馬の世代間比較は2022年のクラシックレースが終わってから行います。
2022年の3歳馬間の強さについては,下記の記事をご参照ください。
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世代間の強さの比較の検討方法
まずは、世代間の強さの比較をどのように行うかを検討いたします。
まず、強さについてですが、タイムを使うこととします。タイムを使った強さの比較の問題点としては、タイムはペースによって左右されるということが挙げられます。ここでは、レースのペースはランダムに決まると仮定し、なるべくサンプルを多く取ることによりこの問題に対処することにします。また、ペース指標も確認し、世代間でペースに偏りがないかも確認します。
なお、タイムの指標としては、距離やレースレベルの影響を除くために、おなじみのTarget frontier JVが提供している補正タイムを利用します。簡単に補正タイムについて説明すると、補正タイムが大きな値であるほどタイムが速く、100が1000万下のクラスにおける平均的な勝ちタイムとなります。また、0.1秒の差が補正タイムの1に対応していると言われています。
また、ペースの指標としては、同ソフトが提供しているRPCIを用います。これは、スタートから残り600mまでのペースと、残り600mからゴールまでのペースを比較したもので、スローペースであるほど数値が大きくなります。
強さの比較としては、それぞれの年の3歳限定戦の全レースについて、全頭およびそれぞれのレースの上位3頭の平均タイムを比較していきます。
全レースの比較(3歳限定戦)
まずは、レースを3歳限定戦の全レースに絞り、年毎の全頭の平均タイムを比較してみましょう(図1)。やや2018年から2020年にかけてタイムが遅くなっているのが分かります。たとえば、2020年3歳世代は70.8、2021年3歳世代は71.8となっており、その差は1≒0.1秒となっております。約半馬身の差ですね。
面白いのは2012年以降、RPCIが下がり続けている(ハイペースになっている)ことです。いわゆる高速馬場の影響なのでしょうか。
掲示板内に入れないとレース終盤に騎手が悟った場合、あとは流してしまい順位下位馬のタイムが不当に落ちることが考えられるため、上位馬に絞った方がレースレベルは正しく測定できる可能性があります。
そのため、次に各レースの上位3頭の平均タイムに絞ってみましょう(図2)。上位入賞馬に限って言えば、年毎にそれほど差は無いようです。しかし、2021年のエフフォーリア世代がやや抜けているように見えます。最近エフフォーリア世代が重賞戦線を席巻しているのも納得かもしれません。
重賞レースの比較(3歳限定戦)
それでは、各世代のトップ馬が集まる重賞レースはどうなっているのでしょうか。まずは全頭の平均タイムから見てみましょう(図3)。
3歳限定の重賞レースを見ると、2018年(アーモンドアイ世代)、2019年(グランアレグリア世代)、2021年(エフフォーリア世代)のタイムが抜けて速くなっています。コントレイル世代はその中では落ち込んでいますが、2016年以前の世代とくらべて特別弱いわけではなさそうです。気になる点は、2020年世代のRPCIが低くなっており、全体的にハイペースとなっていることです。
次に、各レースの上位3頭のみの平均タイムを見てみましょう(図4)。2018年以降の高レベル化が確認できます。1番強い世代はアーモンドアイ世代、次にエフフォーリア世代となっております。コントレイル世代は2010年以降の全世代でみると決して弱くはないのですが、近年のレベルでみると稍見劣りすると言えそうです。
クラシックレースの比較
それでは最後に、サンプルは少なくなるためあくまで参考程度ですが、3歳限定G1のクラシックレースに絞ってレースレベルを見ていきます。まずは全頭の平均タイムです(図5)。
これを見ると、さすがアーモンドアイ世代という形です。クラシックレースに絞った場合、コントレイル世代はエフフォーリア世代と並んで2番目に平均タイムが速く、レースレベルが低かったというわけではなさそうです。
最後に、クラシックレース上位3頭の平均タイムを見てみましょう(図6)。2018年以降のタイムが速くなっていますが、とくに注目すべきは、コントレイル世代の平均タイムが最も速くなっていることです。これまでの分析を踏まえると、近年レースが高レベルかしているなかで、コントレイル世代は全体としてはやや見劣りするものの、クラシックレースについて言えば、レベルは高く、コントレイルの三冠は本物だったと言えるようです。
まとめ
以上の分析をまとめると下記のようになります。
- 全レース全頭の平均タイムでいうと2018年~2020年3歳世代はやや遅い。
- 一方で、各世代のトップ馬が集う重賞においては2018年~2020年3歳世代のレベルは高い。
- 重賞においては、高レベル化している2018年~2020年3歳世代のなかでコントレイル世代のレースレベルはやや見劣りするものの、2010年以降全体でいえばレベルが低いわけではない。
- クラシックレースでいえば、コントレイル世代のレースレベルはトップレベルに高い。
- エフフォーリア世代はどの分析においてもレースレベルが高く、本当に強い世代であると言える。
つまり、無敗の三冠馬コントレイルの”無敗”の部分は少し割り引いて考えないと行けないかもしれませんが、”三冠馬”の部分は本物であり、レースレベルの高いクラシックレースを勝ち上がってきたことは評価されるべき実績であると言えるでしょう。
また、最近のG1戦線を席巻しているエフフォーリア世代が強いというのはデータ的にもどうやら本当のようですね。これからの競馬が楽しみです。
2021年時点の7歳馬以上はやや3歳以前の成績を割り引いて考えても良いかもしれません。
また、非常に高いレースレベルの中で史上最高賞金を獲得したアーモンドアイはさすがと言えます。この記事で最強馬ランキング1位になっているのもうなずけますね。
あと気になる点としては、上記(2)と(3)を踏まえると、近年、全レースのレベルはやや下がっているものの、重賞のレースレベルが上がっています。このことは、近年は能力上位馬と能力下位馬のレベルが下がっていることを意味しています。この傾向がこれからも続くとすれば、全体としてはやや固い決着が増えるかも知れませんね。
11月28日のジャパンカップでは、早熟や成長性のことを無視すれば、とくに世代間の強さは関係なくコントレイルやシャフリヤールを買うことが出来そうです。ただし、外国馬ブルームやジャパン、グランドグローリーには注意が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コントレイルのラストランでしたが、見事有終の美を飾ってくれました。また、レース後の福永騎手の男泣きには胸に来るものがありました。コントレイルには今後種牡馬として強い馬をどんどん生み出して欲しいです。
コントレイルと福永騎手おめでとうございます!
競馬の世代については、こちらのコラムでも分析していますので、是非合わせてお読みください。
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