2021年の天皇賞・秋は、エフフォーリア(単勝オッズ:3.4)、コントレイル(2.5)、グランアレグリア(2.8)という各世代の最強馬たちが鎬をけずる3強対決でした。結果としては、3歳馬エフフォーリアが勝負を制しましたが、コントレイルが2着、グランアレグリアが3着と3強が馬券内を独占し、歴史に残るであろう大興奮のレースを見せてくれました。
3強レースは見る分にはとても面白いのですが、馬券的には、3強で決まるのか?それとも3強以外の馬を押さえるべきなのかの判断が非常に難しくなります。
先の天皇賞・秋では、私はさすがに3強では決まらないだろうと思い、絞りつつも他の馬も押さえた馬券を買ったところ、盛大なトリガミとなってしました。
下記のような競馬の格言があります。
「二強対決は両雄並び立たず、三強対決は三頭ではじめて堅い」
2強対決では牽制し合って漁夫の利を手にする馬が多い一方で、三つ巴の闘いだと実力が発揮できることを意味する格言になります。
この格言に従っていたら私は天皇賞・秋でトリガミになることはなかったかも知れませんが、この格言はデータ的に本当に正しいのでしょうか?
そこで、このコラムでは、2010年1月から2021年11月9日までの障害を除く中央競馬のレースデータをもとに、3強対決の傾向やトリガミならないための馬券戦略を分析してみたいと思います。まずは3強レースの定義をさせて頂きます。
3強レースの定義:
「1~3番人気が単勝オッズ5以下、かつ4番人気~の単勝オッズが10倍以上」
これを前提としたうえで、分析を進めていきましょう。
3強レースの割合
2021年1月からの約11年間の間に3強レースは1,637レースありました。全レースが39,419レースなので、全体の4.2%となっています。
年別に見てみると、1年で約140レースほどになるようです。
クラス別で見てみると、下記の表のようになり(過去のクラス区分も入っていますが),G1レースは全体の5.6%と最も高くなっています。やはり,頂点のG1ともなると上位馬の実力が拮抗していることが多いからでしょうか。
次に,人気別の平均オッズを見てみましょう。やはり3強のオッズは1番人気2.5,3番人気4.4で,1番人気と3番人気の差1.9と拮抗しています。また、定義上当たり前ですが,4番人気の12.7を大きく引き離しています。
3強の成績
1番人気から3番人気までの3強成績は勝率・回収率ともにそれ以下の人気の馬よりも高くなっており、狙い目だと言えます。ただし、1番人気馬の勝率・複勝率は最も高いですが、単複回収率は2番人気と3番人気に比べて低くなっており注意が必要です。
これは3強対決ではどの馬も優劣付けがたく、本命馬を決める際に分からないからとりあえず1番人気馬を買う人が多いからかも知れません。
グラフにすると3強とそれ以外の馬の格差がより分かりやすくなります。4番人気が単勝オッズ10倍以上という条件を付けているからということもありますが、下のグラフから明らかに3強とそれ以外では勝率に明確な格差があることが分かります。
3強のどれかが1着になる確率は74%になっており、連対圏内の61%、複勝圏内の48%を3強が占めております。
また、他のレースでも同様の傾向は見られますが、10番人気以下(とくに12番人気以下)の馬の回収率が低くなっているので、これも注意が必要です。これだけ3強で固く決着するのであれば、10番人気(安全策をとるならば12番人気)以下の馬は基本的に切ってしまっても良いようにも思います。
参考までに、重賞だけに絞った場合は下記のようになります(52レース)。傾向としてはバラバラですが、なぜか3強だと3番人気馬の成績が良いです。また、11・12番人気回収率が異常に高くなっています。
3強は並び立つのか?
つづいて、格言通り「3強は並び立つのか?」を検証してみましょう。3強レース全1,632レース中、3頭並び立った(3頭とも馬券内)レースは全体の18%でした。最も多いのが3強中2頭馬券内のケースで全体の50%を占めます。3頭中1頭のみは29%、0頭の場合は3%しかありません。
個人的には思ったよりも3頭並び立つことが多いという印象です。しかし、基本的には3強中2頭もしくは1頭のみしか馬券内に入らないケースが多いようです。ただし、3強が1頭も馬券内に入らない大荒れのレースは全体の3%となっているので、そのようなケースはほとんどないと考えても良いと思います(経済学や統計においては、3%という数字は0%と確率的には変わらない考えてもよいと言われています)。
ちなみに、3強中2頭決着、1頭決着の場合にどの人気の馬が馬券内に入っているのかも調べましたが、人気順に馬券内に入ってくる感じでとくに面白いものはありませんでした。
3強レースにおける馬券戦略
次に,それぞれの決着パターンについて,人気別の回収率を見てみます。当たり前ではありますが3頭決着および2頭決着の場合は1~3番人気馬がおいしいです。その場合の1~3番人気の回収率を見てみると1番人気に比べて2・3番人気馬の回収率がやや高めとなっています。
3強レースにおいて1頭しか馬券内に入らない場合になってから4番人気以下の馬の回収率が高くなります。
また,3強の1頭もしくは0頭しか馬券内に入らない場合は,4・5番人気馬よりも,6~10番人気の中穴馬の方が回収率が高い傾向があります。3強が並び立たないと予想する場合はこのゾーンの穴馬を積極的に狙っていきたいところです。
次に、それぞれのケースにおける平均配当を見てみましょう。3強決着の場合は固い決着となっているため、それぞれの馬券で平均値と中央値に大きな差は出ていませんが、その他のパターンでは両者に大きな差が生じています。この場合、平均値は大荒れの超高配当のケースに引っ張られている可能性があるため、以下では基本的に中央値を参考にしていきます。
ちなみに、3強レース以外も含めた全てのレースの平均・中央値配当は下記の表となります。右側の「3強レースと比較した倍率」は3強レース全体と全てのレースの配当との比率です。
「全レースと比較した3強レ-スの配当倍率」の行で、その他のレースを含めた全レースの平均配当(中央値)と比べると、3強レースは全体的に低めの配当となっていることがわかります。つまり、格言にあるように、3強レースは固い決着になる傾向があると言えるでしょう。
とくに、全レースと比較したときに配当金が低くなりやすいのは3連複と3連単です。3強レースのそれぞれの配当は全レースの68%、65%しかありません(中央値)。3強対決では馬券内に3強が入ってくる可能性が高いため、配当が低くなっているのではないかと思います。
そのため基本的には、高配当を狙うならば馬連・馬単を狙い、3強の馬を軸に固めに勝負するならば3連複・3連単が良いでしょう。
次に、中央値で考えた際の、的中した際の各馬券種の各掛け金に対する期待配当ごとの最適な点数を計算しました。単位はそれぞれ点数となっています。もちろん、どのオッズの馬券を買うかによって期待配当や点数は異なってくるので、平均的な目安としてお使いください。
掛け金に対する期待配当を2倍と設定する場合の馬券の点数は下の表のようになります。3強レース全体で考えると、馬連は8点、馬単は14点、3連複は18点、3連単は96点となっております。
期待配当5倍の場合は下記の通りです。3強レース全体で考えると、馬連は3点、馬単は6点、3連複は7点、3連単は38点となっております。
期待配当10倍の場合は、馬連は1~2点、馬単は3点、3連複は4点、3連単は19点となっております。
3連複と3連単は配当額の中央値が低くなっているため、結構点数を抑える必要があるようです。
まとめ
このコラムの内容をまとめると以下の通りになります。
- 3強レースの1~3人気馬の勝率・複勝率は高い。
- 格言通り、3強対決は固い決着になりやすい。
- 3強馬中2頭が馬券内に入る可能性が50%。
- 3頭並び立つのは18%
- 3強対決の回収率は高いものの、1番人気より2・3番人気馬の方がやや回収率が高い。
- 3強中1頭のみ、もしくは0頭が馬券内という荒れ展開を予想する場合は6~10番人気の中穴馬が狙い目。
- 3強レースは書いた決着になるため、平均配当も低め。とくに3連複と3連単。
結論としては、3強馬とくに2・3番人気馬を中心になるべく点数を絞って勝負という形が良いという感じです。3強並び立たずに荒れることを予想する際には、ヒモに6~10番人気の中穴馬を押さえておくことが回収率を高めるようです。
この分析を天皇賞・秋までに行っていれば馬連・馬単中心にし、もう少し馬券を絞っていたと思うので、私はガミらなくて済んだかも知れません。
こちらの記事では2強対決について分析しています。是非こちらも合わせてお読みください。
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