この記事では,過去成績が十分に揃わずに予想が難しい2歳馬戦の予想方法や回収率を上げる方法についてデータ分析により検討しています。2歳馬戦の予想は難しい反面,評価が十分に定まっていない馬がほとんどであることから,しっかりと分析すればおいしい馬が転がっているかもしれません。
そうした2歳戦を予想を行ううえで過去の競走成績は参考にできるのでしょうか?また、どの要素を使えば、2歳戦で期待値をとることが出来るのでしょうか?
結論としては、
- 過去走の勝利数などの単純な過去成績では的中率も回収率も上がらない。
- 過去走着差タイムや上り3Fタイム、キャリアなどを使えば的中率は上がるが、回収率は上がらない。
- 過去成績+αで分析すれば、回収率を上げることができる。
ということがわかりました。
今回は2010年1月から2021年11月までの競走データをもとに分析を行っていきます。分析の対象となるレースは「2歳馬の年齢限定戦であり、かつ新馬戦以外のレース」の4,434レースとなります。数値は全て平均値です。
2歳戦で回収率を上げるための+αとは何かを含めて分析を見ていきましょう。
- 複数の指標を掛け合わせて100%を超える回収率(推奨度×GPE馬連BOX119%)
- 予想成績全公開による信頼性の確保
- Google製BIツールを利用した豊富な予想情報の提供と使いやすさの両立
- 精度に比べたら安すぎる価格と用途に合わせた3コースの提供
オッズ・人気別の成績
まずは、過去走成績の情報が不足する2歳限定戦において、馬券購入者が平均して適切に各馬の実力をオッズに反映できているかを確認してみましょう。実力をしっかりとオッズに反映できているとするならば、オッズが低い(人気が高い)馬ほど勝率・複勝率が高くなるはずです。
下のグラフが2歳限定戦の人気別成績になります。棒グラフが勝率であり、線グラフが回収率です。まず、勝率を見ると基本的には人気通りの成績になっており(当たり前ですが)、オッズは適切に馬の能力を反映していると言えます。
ちなみに、1番人気の単勝率(複勝率)は37%(70%)となっており、年齢等を限定しない全レースの1番人気馬の成績である32%(64%)を大きく上回っています。これは、2歳戦の方が能力を馬券購入者が見極めることができているということを意味しますが、珠玉混合である2歳戦では各馬の能力差が大きく、能力のある馬が順当に勝っているということでしょう。
なお、2番人気以下の場合も2歳戦の方がやや勝率は人気通りの結果となっており、2歳戦は実は勝ち馬を見極めやすいといえると思います。
回収率を見ると、6番人気以下の馬から低下傾向にあり、10番人気馬以下からグッと落ち込んでいます。これは全レースの傾向と同じであると言えますが、落ち込みの大きさは2歳戦の方が大きいです。
2歳重賞(148レース)に絞ると下のような結果となります(15番人気の単勝回収率が異常にたかくなりグラフが見にくくなったので回収率の値は右軸になっています)。
2歳戦全レースに比べて人気馬の成績がやや下がっています(1番人気の単勝率34%、複勝率66%)。重賞ともなると2歳戦の珠玉混合の度合いも下がり、実力が拮抗したレースになり、実力馬を見分けることが難しくなっているのでしょう。そのため、人気の低い馬も勝ち目が出てきており、1~15番人気まで(複勝)回収率は横ばいとなっています。
以上より、2歳限定戦は(能力差が大きいため)その他のレースに比べて人気通りに決着する傾向があるものの、重賞の場合はその傾向が薄れることがわかりました。それでは、本題の過去走の成績から2歳戦の勝敗を予想できるのかという点を見ていきましょう。
過去走の3着以内回数別成績
それでは、まずは過去の3着以内回収別の成績を見てみましょう。1着回数としなかったのは過去走が少なく傾向が見られなかったためです。
下がそのグラフとなります。注目すべきは馬券内回数が0回の馬は勝率が劣っている点です。基本的には避けた方がよいでしょう。また、馬券内6回の馬は勝率が抜けており、回収率も100%を超えているため、実力は本物であると言えますが、過去11年間で3頭しかいません。
問題は1回から5回までの成績ですが、複勝率でいうと横ばいとなっており、単勝率は馬券内3回と4回の馬が最も高くなっています(5回の馬の単勝率が低いのはサンプル数が23と少ないからでしょう)。注目すべきは回収率は馬券内1回の馬が一番高く、そこから5回に掛けて落ちていることです。1回馬券内に入った馬の次走は狙い目であると言えます。そこからは期待度が増していき、過大人気となるため期待値的にはおいしくないことがわかります。
なお、過去走1着回数別にみても大まかな傾向としては3着以内回数と同じです。
2歳重賞の過去3着以内回数毎の成績は下のようになります。ほぼ2歳戦全体と同じ傾向といえますが、3着以内1回から4回にかけて勝率と回収率が低下傾向にあります。おそらくは、重賞までに新馬戦のみ出走し、そこで3着以内に入っている馬の成績が良いのではないかと思います。
過去走3着以内回収後との分析では、3着以内に入ったことのない馬を除けば、基本的に3着以内回数と成績との関係はあまりなく、むしろ、回収率や重賞時の成績という面では3着以内回数が1回もしくは2回と少ない方が良いという面白い結果がわかりました。
これは、競馬の勝ち負けにおいては、個々の競走馬の”絶対的な”能力ではなく、レースに出走する競走馬のなかでの”相対的な”能力が重要であるため、出走レースが少なく相対的な能力が把握しづらい2歳戦においては過去走の勝利数はそれほど役に立たないということでしょう。たとえば、珠玉混合の2歳戦においてレースレベルが低いレースで勝ちを重ねている場合はその馬の勝利数は役に立たないこととなります。
前走着差タイム別成績
2歳戦では相対的な能力が把握しづらいため、過去走の勝利数(3着以内数)は予想においてそれほど役に立たないことがわかりました。間接的ではありますが、着差によってこの問題をある程度解消することができます。レースレベルが低いレースで勝っていたとしても2着馬と大きく引き離して勝利していたら相対的な能力も高いと考えられるからです。
着差タイムは1着馬の場合2着馬とのタイム差、2着馬以下の場合は1着馬とのタイム差となっています。すなわち、1着馬のみが負(マイナス)の値となります。この前走着差タイム順に出走馬を10個のグループにして、それぞれの平均成績を見てみましょう。
下がそのグラフとなります。こちらの勝率は着差タイムが大きくなるほど悪くなるという傾向が見られます。最も着差タイムが小さいグループの勝率がやや落ち込んでいるのは大逃げが決まったなどのまぐれ勝ちが含まれるからでしょうか。
一方で、回収率には着差1.4秒以上は低下傾向にあるものの、基本的には横ばいとなっています。競馬ファンの皆さんは前走着差タイムの情報を適切にオッズに織り込んでおり、着差タイムだけでは回収率を上げることは難しいようです。
2歳重賞に絞った場合は下のようになります。勝率は左軸、回収率は右軸です。1.1秒以上~1.4秒未満の単勝回収率、2.2秒以上~2.9秒未満の複勝率が異常に高くなっていますが、これは異常値として無視しても良いでしょう。2歳戦全レースとほぼ同じような傾向が見られますが、前走着差0.1秒以下のグループが勝率・回収率ともに良くなっています。2歳重賞においては前走着差タイムは速ければ速いほど良さそうです。
ちなみに、単純な過去走勝利数の問題を解決するその他の指標として上り3Fタイムも挙げられます。ラスト3Fは各馬が残りの力を振り絞って全力疾走するため、スピードやスタミナといった能力の底力が試されます(一方で、レースのペースや脚質の影響を受ける問題が生じます)。こちらも上記の着差タイムと大まかに同じ傾向となっています。
キャリア別成績
つづいて、キャリア別の成績を見てみましょう。競走馬はレース経験を積むことによって成長することが考えれます。2歳馬はそもそもレース経験が少ないため、その効果は大きいでしょう。つまり、キャリアを多く積んでいる方が成績が良くなることが考えれます。
2歳戦のキャリア別成績は下のようになります(左軸が勝率、右軸が回収率)。キャリア1戦目の成績は悪いですが、回収率はそこまで悪くはありません。キャリア2戦目~5戦目までの成績および回収率はほぼ横並びとなっていますが、6戦目移行は勝率・回収率ともに低下傾向にあります。これは、未勝利戦で勝てない馬が連戦でレースに出走させられるためだと考えられます。
重賞の場合は下記のようになります。2歳戦全レースとほぼ同様の結果です。3戦目からは成績が低下しています。重賞の場合はキャリア2戦目もしくは3戦目が狙い目であると言えるでしょう。
前走レースレベル別の成績
ここまでの分析では、回収率を下げない馬の選び方はある程度わかりましたが、回収率100%を超えるような馬の見つけ方は分かりません。それでは、前走レースレベルに着目して分析を行ってみましょう。2歳戦は過去の出走数や対戦数が少ないため相対的な能力差が過去走の成績ではわかりづらいという問題点がありました。
そこで、レースレベルが高いレースで勝った馬であれば相対的な能力も高いことが推察されます。ここで、レースレベルの尺度として前走の1~3着の補正タイム平均値を使います。補正タイムに関する説明は下記をご参照ください。
前走のレースレベルを1(低い)~5(高い)の5段階に分けて、前走1着もしく3着以内馬の2歳戦の成績を見てみましょう。
その結果が下記のようになります(左軸が勝率、右軸が回収率)。結構綺麗な凹型のグラフになっています。すなわち、前走レースレベルが低いもしくは高い方が、中レベルのレースで勝利しているよりも勝率・回収率が高いという形です。もちろん、レースレベルが最も高いレースに勝利した馬の成績が最も良くなっております。注目すべきは、レースレベル1もしくはレースレベル5の単勝回収率がそれぞれ約103%、123%と100%を超えている点です。前走レースレベルを分析し、レベルが高いもしくは低いレースで勝っている馬を見つけることができれば回収率を上げることができます。
問題は、「なぜレースレベルが最も低い前走勝利馬の成績が良いのか?」という点ですが、おそらくこれはスローペースになっており、そのなかの駆け引きで買っている馬は操縦性が良くその後の成績も良いとかでしょうか?回収率が良いのは、前走レースレベルが低かった(当該馬のタイムも遅かった)ため、過小人気になっているということが考えられます。
2歳重賞に絞ると下のグラフのようになります。やはり、前走レースレベルが低い場合、過小人気になるため、回収率が上がるようです(レースレベル1の単勝回収率149%、複勝回収率111%)。前走ペースの遅いレースで1着となっている馬は狙い目です。一方で、前走レースレベル5(高い)の勝ち馬は回収率こそそれほど高くありませんが、勝率(とくに複勝率)がずば抜けています。軸馬とするのは良いように思われます。
ちなみに、前走3着以内馬に条件を変えたところ、それほど明確な傾向は見られませんでした。ただし、2歳重賞に限れば、前走3着以内馬でレースレベル1の単勝回収率146%、複勝回収率109%と非常に優秀でした。
馬体重別成績
前走レースレベルの分析はやや難しいですが、より簡単な指標で回収率を稼ぐことが出来るのが馬体重です(過去成績とは言えないですが)。2歳馬は成長期にあるため、そのなかでどれだけ他の馬よりも成長しているかが勝敗に直結すると考えられます。すなわち、単純に考えると馬体重が重い方が成績が良くなりそうです。
2歳戦で前走1着馬の馬体重別成績は下のようになります。馬体重が上がるにつれて勝率・回収率が上がっています。前走勝利馬であれば馬体重が重いに超したことはありません(前走3着以内馬としても傾向が同じです)。
ただし、2歳重賞になると回収率の面でやや傾向が異なっています。438~454キロの馬は馬体重がやや軽いため、解消人気となり単勝回収率122%、複勝回収率97%と優秀です。また、468~484キロの馬は馬体重が2歳馬として適正なのか勝率が最も高く、複勝回収率111%と良くなっています。ここらへんの馬は狙い目です。
なお、当日レース1時間前に発表される馬体重まで馬券購入が待てない人は前走馬体重でも同じような傾向になっていますので、そちらを使われても問題はありません。
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まとめ
- 2歳限定戦は能力差がバラバラであり、人気と着順は比例する(固い決着になりやすい)。
- 過去走の着順成績はそれほど関係がない。
- 少ないキャリアで勝利している馬ほど勝率・回収率が良い。
- 前走着差タイムや前走上り3Fタイムは速ければ速いほど勝率が良い。
- ただし、2歳戦全般においてはそれだけで回収率を上げることは難しいものの、重賞においては速いほうが回収率が高い傾向がある。
- 前走レースレベルが特に低い(3着以内馬のタイムが遅いレース)レースの勝ち馬は次走で回収率が非常に高い。
- 前走レースレベルが特に高いレースの勝ち馬は次走の勝率・回収率が高い(重賞の場合は回収率は普通)。
- 前走1着(傾向は弱くなるが3着以内)馬は馬体重が重いほど勝率・回収率が良い。
- ただし、2歳重賞の回収率においては、438~454キロと468~484キロの範囲の馬で期待値が取れる。
基本的には、2歳限定戦は人気と着順が比例し、固い決着となる傾向があるため馬券の点数は抑えたいところです。また、勝率でいえば、前走着差タイムや上り3Fタイムの速い馬、前走馬券内馬で馬体重の重い馬、前走レースレベルの高い(タイムの速い)レースの勝ち馬を軸とすることが有効であると言えます。
回収率でいうと、前走レースレベルが特に低い(タイムの遅い)レースや特に高いレースの勝ち馬や、重賞であれば前走レースレベルが特に低いレースの3着以内馬を買うことが有効です。また、 前走馬券内馬で馬体重の重い馬や2歳重賞では438~454キロと468~484キロの範囲の馬で期待値を稼ぐことができます。
やはり、過去走の少ない2歳戦においては、各馬の相対的な能力を把握することが難しく、単純な過去成績からの予想では回収率を上げることは難しいですが、レースレベルの把握や前走成績×馬体重のように一歩進んだ分析が必要ですね。そうした+αの分析ができれば、2歳戦で過去成績から大きく期待値をとることが出来そうです。
過去走成績の情報が少ない2歳馬や3歳馬の予想は難しいですが、下記のコラムでは3歳馬の予想に役立てるためのデータ分析をおこなっております。こちらも合わせてお読みいただけると幸いです。
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